腰痛は「動かして」治しなさい
松平浩著 講談社+α新書 2016年発行
「腰痛」というと、長引くもの、慢性的なものというイメージが強い。
一度腰痛に悩むと、日常的にその悩みと付き合っていかなければならない印象があった。
私の周囲でも、腰痛やぎっくり腰にひとたびかかると、常に痛みに悩まされている同僚や上司が少なくなかったからだ。
客室乗務職も腰への負担が大きい職業の一つだ。お客様のスーツケースを持ち上げて座席上の物入れに収納したり、サービス時には食事やワイン、ビールなどのアルコールドリンクを入れたカート(100㎏近い)を揺れの中、押したり、引いたりをくり返す。中にはハードランディング(飛行機が急降下して地面に叩きつけられるように着陸すること)で、腰を痛めてフライト後に突然立てなくなってしまった人もいた。また、その他の職業では、長時間運転を行う運送業のドライバーや、重い荷物をくり返し取り扱う荷役作業を行う方々に腰痛の方が多いと聞く。
腰を痛めると、ひとつひとつの動きに慎重になる。またくり返すのではないかという不安がよぎる。私自身も幸い、長引くことはなかったが、腰を痛めた時は長引かせないためにも安静が1番だと考えていた。腰痛に悩む人が多い職業従事者の中でも、腰痛はできる限り腰に負担をかけないよう安静にし、日頃から腹筋、体幹を鍛える腰痛への予防が重要という考えが一般的であった。
長年腰痛に悩まされてこられた方は「腰痛は「動かして」治しなさい」という一言に驚く方も多いのではないかと思う。「活動的であるほど、腰痛はよくなる」、「ぎっくり腰を発症の後、腰痛を長引かせないためには、過度に不安や恐怖感を抱かないことや、そのうえで、痛みがあっても「できるだけ、動くこと」「活動的に過ごすこと」が重要なポイント」というこれまでの常識とは異なる、腰痛治療の新常識が本書では述べられている。もしかすると、私の腰痛が長引かなかった要因も、痛みはありながらもヨガ教室には通い続けていたからかもしれない。
本書では自宅でも職場にいながらでも、症状改善に役立ち、3秒で実施することができる「これだけ体操」の実践方法、その効果が紹介されている。「あなたが普段行っている方法よりも、もっと良い方法が必ず存在している」という格言は、腰痛にも共通するようだ。